こんにちは。
関西ドローンの伊藤です。
ハロウィーンで楽しく浮かれている中、岐阜県で悲しい事故が発生しました。

「機体トラブルの可能性」飛行中の『菓子まきドローン』観客エリアに落下 6人ケガ 岐阜

ドローン業界界隈では、連日この話題で持ちきりです。
SNSやブログで、法的な面や操縦技術的な面、様々な角度からこの事故の検証が行われています。
私自身もこのニュースを聞いた時、ぞっとしました。他人事ではないからです。自分にも起こる可能性はあります。「パイロットが悪い」「安全面の配慮が少ない」と事故を起こしてしまった方を糾弾するのは簡単ですが、今回はどうすればこの事故を回避できたのか考えてみようと思います。

 

最近、国交省が通達を行うほどの事故や事件が多い

まずは最近のドローンニュースについてです。JIC2017なんて全国ネットじゃほとんど注目されてないのに、やはりドローンは事故のニュースだけが取り上げられてしまいがちですね。本来はJIC2017のように、素晴らしいドローン関係者の方々が、真剣にドローンを人のために活用しようとしている未来あるニュースがもっと取り上げられてもいいと思うのですが…。
余談になってしまいましたが、最近は国交省が関係各所に通達を行うくらいの大きな事故が多いです。

(10月11日付け)
国土交通省航空局は、平成27年12月より、改正航空法に基づき、空港等の周辺や人口集中地区などの上空の空域を原則として飛行禁止とするなど、有人機並びに地上の人及び物件の安全を確保するため、無人航空機を飛行させる空域及び飛行の方法等について基本的なルールを定めています。

しかしながら、10月5日、大阪国際空港において、誘導路上空で無人航空機らしき物体が飛行している旨地上走行中の航空機から管制官に通報があり、同通報を聴取した着陸進入中の航空機が自主的に着陸復行を実施する事案が発生しました。
本件について、航空機運航者からの報告によると当該飛行物体と航空機との接近等の危険性はなかったとのことですが、当該飛行物体が無人航空機であった場合には、航空法第132条に抵触する可能性があり、航空機の航行の安全に支障を及ぼしかねない行為でありました。

国交省HPより 一部抜粋

これは2017年10月5にちに起きた大阪国際空港へのドローンらしき物体の侵入事件です。ここから一ヶ月、詳しくは国交省HPを見ていただきたいのですが、今回のお菓子撒きまで飛行に関する通達が3件も出ています。ここまで頻発していると、改正航空法も今一度見直される可能性もあります。
そんな中、ついに今回園児6人が怪我してしまうほどのドローンによる大きな事故が発生してしまいました。何より怖いのは、この事故を起こしたパイロット自身が「原因がわからない」「電波障害かもしれない」「機体トラブルの可能性も」(2017年11月7日現在)と、原因がわかっていないことです。

ドローン墜落事故のほとんどは原因がわかっていない理由

では、他のドローン事故の多くはどうなのでしょうか?
国交省に報告が入っている事故の一覧が下記にあります。
平成29年度 無人航空機に係る事故等の一覧(国土交通省に報告のあったもの)

この中を見ていくと、一番右の「報告された原因分析及び是正措置」の項目に事故原因の調査結果が載っています。一部抜粋すると…

このように、「…可能性がある」「原因不明」「…思われる」という表記が多いです。
同じ資料の「事案の概要」欄を見れば、大体の原因は載っていて、こちらで記載の「原因不明」はパイロットの操縦技術によるものとなっています。
いずれにせよ、報告されている事故の多くは“はっきりとした原因がわかっていない”場合が多いのです。
なぜかと言うと、事故後に調査をした場合、確認できる情報が限られているからです。
例えば、DJI製品ですとアプリ上に残っている飛行ログ。これを見ても、例えばGPSログでどこで墜落したかは大凡わかる場合もありますが、例えば木に当たって落ちたのか、バードアタックで落ちたのかはわかりません。映像が残っていれば、それらの特定もできます。
さらにパイロット側はどうでしょう?事故後の調査で、事故発生時にパイロットが機体を見ていたのか、アプリの画面を見ていたのか。はたまたよそ見をしていたのか。こればかりは、事故後の調査で第三者がいくら調査しようとパイロット本人の発言しか証拠が出揃わないので判断が難しくなります。
比較として車の事故をあげてみます。物損事故にしろ人身事故にしろ、ブレーキ痕や道路上に設置された監視カメラ。通行人、他の運転手の証言などを掛け合わせると、事故を起こしたドライバーは無茶苦茶な言い訳は出来ないわけです。飲酒運転で電柱にぶつかったとしても、その事故原因は明確ですよね?
ドローンの場合、その証拠が不明瞭な場合が多いです。特にパイロットの操縦に関しては、明らかな技量不足や体調面などを除いて、事故発生時の状況は完全にブッラックボックス化してしまいます。はっきり言ってしまえば、パイロットは事故原因についてどうとでも言えてしまいます。しかも世の中はドローンの仕組みをわかっていないため、なんだか危ないものとの認識が広がってしまいます。
それを明らかにするために、飛行マニュアルがあり、各種国交省への申請と認可が必要になります。
だからこそ、ドローンパイロットにはモラルが求められます。明確な技量も求められます。安全への配慮も求められます。やっていいことと悪いことの判断もきちんと行う必要があります。ドローンは”誰でも飛ばせる”ものではありません。飛ぶものは万物の法則に従い必ず落ちます。ドローンは”誰でも落とせる”ものなのです。

どうすれば事故を防げた?

ではどうすれば今回のような事故を防ぐことができたのでしょうか?
あまり偉そうなことを言いたくはありませんが(既に言ってしまっている)、1ドローンパイロットとして、毎日ドローンのことを考えている身として、どう防ぐかは考える責任があります。

  1. そもそも飛ばさない
    事故発生時の状況を映像や写真で色々と調べていると、子供の真横でモーターを起動したり(勿論コーンを置いて近づかない配慮はしている)、イベントの上空ほぼ真上を飛ばしたり、お菓子撒きなのでテンションが上がりきった子供のすぐ傍でフライトしていました。私であれば、まずそのような状況では飛ばしません。というか怖くてできません。仮に行う必要があるとしても、子供から数十mは離れて、お菓子を撒いた後にドローンを離してから、子供達にお菓子を拾わせます。
  2. 申請時のマニュアル以上の対策は必ず行う
    恐らく今回は、催しもの上空や物件投下の許可を得て飛行していたかと思いますが、その飛行に沿ったマニュアル以上のことは行います。例えば参加者全員には必ず周知して同意書にサインをしてもらいます。スマホの電源もすべて落としてもらいます。監視員も子供がいることを考えれば、この規模ですと10名以上は必要です。なんならお子様全員にヘルメットを配布します。そこまでやっても、私でしたらまだ不安が残ります。
  3. 訓練を徹底して行う
    私自身もお祭の撮影を行った経験があります。その時はお祭り会場の真上には絶対入らず、隣の大きなグラウンドで、飛行経路をコーンで区切って撮影を行いました。しかしそれでも、子供や興味のある方は近づいてきます。コーンを跨ごうとする人もいます。話しかけられる可能性もあります。不特定多数の人がいる場でのフライトは、その時に動揺してしまわないように、同じ状況を想定した訓練は何回も繰り返すべきだと思います。
  4. 機体を自分の手足のように理解する
    今回フライトに使用されていた機体は、恐らくオリジナルの機体です。エンジニア並みの知識があって、機体の隅々まで把握しているのであればそれでも構わないのですが、そうでないならばなるべく情報の多い民生品で可能な事を行うべきです。いずれにせよ、機体に手を加えるのであればその理解は深くしておかなければいけないと思います。

 

まとめ

今回の事故もそうですが、今後もっとこういったドローンの事故が増えていく可能性もあります。空の産業革命と言われているドローンですが、使う側の人間が成長しなければ、革命など起きません。私自身もドローンパイロットとして、気を引き締めて技術、知識の向上に努めたいと思います。